尾州小木村 産後発狂の山姥
どんな伝承か
天野信景の『鹽尻』に、尾州小木村の百姓の妻が産後に発狂して山に入り、十八年を経て後に一度戻って来た話が伝えられている。裸形で、ただ腰のまわりに草の葉をまとっていたという。この女はある猟人に逢って身の上を語った。飢えるままに初めは虫を捕って食べていたが、それでは足りぬので、後には狐や狸を見つけしだい引き裂いて食とし、次第に力がついて寒いとも物欲しいとも思わなくなったという。一旦は昔の家に還ってみたが、身内の者までが元の自分と知らず恐れて騒ぐので、詮方なく再び山中の生活に戻ってしまったと語った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。