卵を運んできた三毛猫の恩返し
どんな伝承か
本吉郡新月村に、宝鏡寺の隠居寺である清竜庵があった。明治三十七年ごろ、宝鏡寺を隠居した保田孝道和尚がこの庵で余生を送っていた。和尚は三毛の飼猫をわが子のように可愛がり、猫にだけは生臭物を工面して与えていたが、老齢で病に臥し、収入も絶えて、檀家や門前の人々の喜捨で暮らす有様となった。ある朝、枕もとに鶏の卵が四、五個ころがっていた。心当たりを尋ねても誰も知らず、それが三、四日続いた。見舞に来た檀家の割烹扇屋の主人が、自分の家でも毎日卵が一つ二つ無くなると打ち明け、卵をよく見ると小さな爪痕や歯の傷、猫の毛までついていた。三毛の恩返しと知れ、和尚は感激しつつも猫を戒めたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
宮城県史 民俗編(茂木徳郎(「妖怪 幽霊」の章)・宮城県史シリーズ)
『宮城県史 民俗編』は宮城県の県史の民俗編で、ここに収めるのは茂木徳郎が執筆した章「妖怪 幽霊」である。山・道・木・水・海・雪・家など出現の場所による分類に沿って妖怪変化を論じ、幽霊とヒトダマ・死霊・生霊の観念を考えたうえで、県内の妖怪・幽霊・動物変化の伝承を郡・町村名を添えて集める。序説・本論・事例篇・参考の順に並び、序説では昭和二十四年の迷信調査と昭和三十年のNHK仙台中央放送局の調査にも触れる。