コレラ除けの三本足猿と人面鳥の札
どんな伝承か
その年、東京ではコレラが猛烈に流行した。絵草紙屋は三本足の猿や、老人の顔に十本もの鳥の足が生えた異形を描いた粗末な絵を売り出し、これを門口に貼れば悪疫は近寄らないと能書きを付けた。人々は争って買い求め、家々の表に貼りつけたという。なぜその図が疫病除けになるのかは誰にも分からない。疱瘡除けに為朝の名を書いた紙を出し、風邪除けに久松るすと札を貼ったのと同じ類であろう。あまりに広まったため、警視総監は八月二十八日、二種の絵を出版差し止めとし、門戸に貼った者があれば直ちにやめさせよと巡査本部へ達した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。