コレラで死んだ妊婦の棺から生まれた男児
どんな伝承か
明治二十三年十月、大阪西成郡上福島村三百八十六番地の戸長文五郎方に止宿していた、同郡下新庄村の生駒おふさ二十四歳は、妊娠して早くも臨月であった。夫は西区あたりに情人があって妻を顧みず、おふさは泣く泣く日を送っていたが、二十日の午後から急に激しい下痢を起こした。身は重く夫は留守、近所の者は時節柄コレラを恐れて見舞わず、医師を乞うことも薬を求めることもできぬまま翌朝死亡した。巡査と医師が出張して検めるとコレラに相違なく、夫を呼び戻して死体を棺に納めようとしたその時、死体から玉のような男児が分娩され、立会の吏員は大いに驚いたという。
原典より
身重だった女が、赤ん坊を産むと同時に死んだという話は珍しいことではないが、これは絶命した身持女の死体から、男の子が産れ出たというから世にも不思議な話である。—— 日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。