通夜の座敷から消えた遺体
どんな伝承か
福島県郡山市中江堀の養蚕教師某の妻たきは、四十八歳、一ヶ月前から病気治療中で、十四日午後十一時ごろ死亡した。親戚や近所の者が集まって通夜をしていたところ、十五日午前二時すぎ、一同がうとうとと居眠りをしているあいだに、死人を寝かせておいた蒲団がもぬけの殻となり、死体が見えなくなった。大騒ぎとなって郡山署へ捜査願を出し、居合せた三十余名も付近を捜したが見つからない。夫は表戸の鍵がはずしてあることから生き返って出て行ったのだろうと語り、県衛生課長は仮死の状態から蘇生し、夢遊病者のようになったのだろうと語った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。