山中で木を伐る天狗の音
どんな伝承か
テングナメシは岩手県地方の話である。山の奥から突然、木を伐る音や木の倒れる音がするが、翌朝そのあたりへ行ってみると全く異常はない。天狗倒しともよぶ。「遠野物語拾遺」には次のようにある。深山で山小屋掛けをして泊まっていると、小屋のすぐ傍の森の中で大木が切り倒されるような物音が聞こえる。初めは斧の音がかきん、かきんと聞こえ、頃合いになるとカリ、カリと木が倒れる音がして、その端風が人のいる処にふわりと感じられる。翌日行って見ても倒された木は一本も見当たらない。またどどどんと太鼓のような音が聞こえることもあり、狸の太鼓とも天狗の太鼓ともいう。そんな音がすると二、三日後には必ず山が荒れるという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。