納戸で臼をひく亡き祖母
どんな伝承か
会津城下の酒造屋の女房が、赤児を産むために実家へ戻っていた。留守の間に主人は下女を納戸に引き入れて契った。灯りを消してあるので納戸の中は暗い。ふと主人は下女から離れた。誰もいないはずなのにギシギシと臼をひく音がするからである。暗さに目が慣れてくると、納戸の隅で老婆が一人臼をひいていた。その顔がだんだんはっきりしてくると、それは実家に戻っている女房の亡くなった祖母であった。主人があわてて灯りを点すと、老婆も臼も消えていた。納戸婆は女房のほうの祖母がなるものだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年))
『東北怪談の旅』は、山田野理夫が昭和四十九年に編んだ東北地方の怪談集である。青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の六県に伝わる妖怪や幽霊の話、飢饉と間引にまつわる話、江戸時代の奇談などを、一番から一六三番までの短い話として収める。各話の末尾に県名を記し、恐山や飢饉の記録にふれて東北の怪談と怨念を結びつけるまえがきと、怪談観や霊能者をめぐる回想を記したあとがきを付す。