下宿の裏の寺に燃えた青白い火
どんな伝承か
著者が学生時代から八年にわたって世話になった下宿の老婦人は、昔の津軽で有数の士族の家に生まれ、父は初代の女子師範学校長を務めた教育者であった。彼女自身も子を三人産んでから女子師範学校に入ったという変わり種で、頭のよい人であった。この老婦人は十数年前の四月、雪解けの後に、下宿の裏手にある寺の墓から青白い火がポッポッと燃えて歩いているのを、下宿の学生と一緒に見た。それ以来、霊魂もまた介在する「モリベ」の一種だろうと考えるようになり、ついに霊魂の存在を固く信じるようになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ)
『私は幽霊を見た――現代怪談実話傑作選』は、東雅夫が編んだ怪談実話のアンソロジーで、メディアファクトリーのMF文庫ダ・ヴィンチの一冊である。平山蘆江・火野葦平・佐藤春夫・徳川夢声・遠藤周作・柴田錬三郎から石原慎太郎・新倉イワオ・稲川淳二まで、作家や文化人が自ら見聞きした幽霊や怪異を書いた文章を集める。目次には二十三篇と編者解説が並び、水木しげる・山田野理夫・桝井寿郎の座談「怪談詮議」や中岡俊哉「イタコの謎を追う」の抄録も含む。