血だらけで本堂に立った男
どんな伝承か
弘前のある寺の和尚が、夜、本堂で経をあげていると、本堂の戸をたたく音がした。戸を開けてみると、そこに頭と顔を血だらけにした男が立っている。驚いて居間のほうへ「薬だ、薬だ」と叫びながら行き、薬を持って戻ってみると誰もいない。ふと玄関の土間を見ると、血のこぼれた跡があった。和尚は気味悪くなって、再び熱心に経をあげた。翌朝早く、檀家の弘前在の村から使いが来て、きのうの夕方、餅をついて合取りをしていた男が、あやまって頭を叩かれて死んだと告げた。死んでいたその男は、ゆうべたしかに本堂に立っていた男だったからである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。