裾が触れて回った丸い炭取り
どんな伝承か
佐々木氏の曾祖母が死去した時、棺に取り納めて親族の者が集まり、その夜は一同座敷に寝た。死者の娘で乱心のため離縁された婦人もその中にいた。喪の間は火の気を絶やすことを忌むのが所の風なので、祖母と母の二人だけが大きな囲炉裏の両側に坐り、母人は脇に炭籠を置いて折おり炭を継いでいた。ふと裏口の方から足音がして来る者を見ると、亡くなった老女である。衣物の裾を三角に取り上げて縫いつけた癖も縞目も見覚えの通りだった。炉の脇を通る時、裾が触れて丸い炭取りがくるくると回った。座敷の方へ近寄って行くと、かの狂女がおばあさんが来たと叫んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。