要塞づくりの中学生が興じたこっくりさん
どんな伝承か
昭和二十年六月ごろ、戦況の悪化で中学生たちは博多湾沿岸の要塞づくりに駆り出され、大八車で砂利を運んでいた。昼の弁当どきには、友人たちが草むらに隠れて、神風は吹くのか、連合艦隊はまだあるのかとこっくりさんに尋ねる遊びがはやっていた。憲兵や警察に見つかれば大ごとなので、それだけにスリルがあった。箸を持つ二人の手が震えて動き出しても、気に入らない答えが出ると偽のこっくりは出ていけと怒鳴るので、答えは初めから決まっているようなものだった。そこへ敵機だ伏せろと中隊長の声が響き、グラマンと爆撃機の編隊が悠々と頭上を過ぎていったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。