名馬に荷を積んで帰った大隊長
どんな伝承か
昭和二十年夏の頃のことである。大隊長のA氏は陸軍大尉で豪勇の士であったが、終戦となるととたんに小さく見えた。見習士官の中から軍財産の整理を任せ、棚卸表と財産目録を作らせて、すべて換金させた。ところが馬一頭だけはどうしても残しておけという命令であった。数日後、その名馬に、残しておいた衣類や毛布や食糧を山と積み、自分は手綱を引いて岩手県へ帰っていったという。
原典より
敗戦を十日に知って一番問題なのは丸太で二百人位いた。—— 現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。