灯の前に現れた小中将の分身
どんな伝承か
日本で複体を記した最も古い話は『今昔物語』に見える。平安時代、女御に仕える小中将という美しい女が、美濃守藤原隆経に愛されていた。ある夕暮れ、小中将が灯をともしていると、その傍らに着物も姿もそっくりな者が現れ、女房たちが面白がって騒ぐうち、小中将が手で払うと消えた。二十日ほどのち小中将は病んで暇をもらい、太秦の親もとへ帰った。隆経が訪ねて語り合い、明け方に戻る途中、追ってきた使いがその死を知らせた。灯の前の姿によく祈らず払い捨てたためだと語り伝えられたという。続いて、源融の亡霊が河原院に住む宇多上皇の前に現れ、狭くて困ると訴えた話も紹介される。
原典より
ある日の暮れがた、小中将が灯をつけていると、灯の許に、着衣も容姿も小中将と瓜二つの姿が現われた。—— 霊魂の世界 ― 心霊科学入門(板谷樹・宮沢虎雄・1971年(昭和46年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊魂の世界 ― 心霊科学入門(板谷樹・宮沢虎雄・1971年(昭和46年))
『霊魂の世界――心霊科学入門』は、板谷樹と宮沢虎雄が昭和四十六年に著した心霊科学の入門書である。古代の霊魂観や内外の幽霊の記録に始まり、ハイズビル事件と英米の心霊研究学会の創立、霊視・霊言などの精神的現象、物質化や心霊写真などの物理的現象、心霊治療、死と再生までを、日本心霊科学協会での実験や勝五郎再生の現地調査を交えて述べる。全十二章からなり、昭和四十二年に徳間書店から出た同題の本に筆を加え、同協会が自費出版したものである。