明多意山の大岩に立つ山女郎
どんな伝承か
伊沢村の石工が、もっと良い石山はないかと明多意山の奥へ分け入ったところ、見事な大岩があった。ところがその岩の上に、黒髪を後ろに垂らした色白の美しい女が立っていて、石工を見るとにこにこと笑いかけてきた。こんな山奥に人がいるはずもなく、石工はうわさの山女郎だと考える余裕さえなく、命からがら逃げ帰った。それ以来その大岩は女郎が岩と呼ばれるようになり、今も明多意山の山中に残っているという。
原典より
それからのちだれいうとなくその巨岩を「女郎が岩」と呼ぶようになった。—— 阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年))
『阿波の怪談』は、横山春陽が昭和三十三年に編み、徳島新聞出版部から発行した郷土の怪談集である。徳島県の各地と土佐との国境の山中に伝わる山女郎、淵や池の主、カッパ、亡霊、火の玉、タヌキやキツネ、大ジャの話を、平安朝の言い伝えから藩政期、明治・大正、昭和の出来事まで、編者が古老に聞き、書物から拾って題ごとに並べる。おわりにでカッパやヘビの話の多い地域や海の話の少なさについて記す。