芋掘りかごに魚を届けたカッパ
どんな伝承か
善入寺川にカッパが棲んでいた。そこから真北にあたる阿波郡市場町伊月の江東家の下男が馬をひいて洗いに行くと、カッパが馬の前足にかみついて深みへ引き込もうとした。いつにないいななきに気づいた下男が首筋をつかんで揺すぶると、皿の水がこぼれてぐたりとなったので、綱で馬の背に縛りつけて連れ帰った。カッパは泣き声で許しを乞い、明日の朝から毎日芋掘りかごに一杯の魚を持って来るから、かごに包丁のようなものは入れないでほしいと言った。翌朝から約束どおり魚が届いたが、下女がかごに包丁を入れた翌朝からは、もう魚は入っていなかったという。
原典より
翌朝早く起きた下女が驚いたのは、門に約束のとおり、芋掘りかごに一ぱい、魚がピチピチとはねていたことであった。—— 阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年))
『阿波の怪談』は、横山春陽が昭和三十三年に編み、徳島新聞出版部から発行した郷土の怪談集である。徳島県の各地と土佐との国境の山中に伝わる山女郎、淵や池の主、カッパ、亡霊、火の玉、タヌキやキツネ、大ジャの話を、平安朝の言い伝えから藩政期、明治・大正、昭和の出来事まで、編者が古老に聞き、書物から拾って題ごとに並べる。おわりにでカッパやヘビの話の多い地域や海の話の少なさについて記す。