結核療養所で始まった体外離脱
どんな伝承か
京都市に住む中川肇さん(七十歳)は、終戦から間もないころ結核の療養所に入り、毎日のように血を吐いて苦しんでいた。その最中に体から抜け出す体験が始まった。まずギューッと金縛りに襲われ、体が激しく痙攣したかと思うと、すうっと浮き上がって肉体を離れる。しばらく揺らめいたのち、果てしない空間を飛び回り、ときには家々の屋根のはるか上を猛烈な速さで駆け抜けた。行き先は思いのままで、戻ると硬直した体へ静かに吸い込まれていった。ぼろぼろの体から逃れて自由に動けることに密かな喜びを覚え、二カ月もすると当たり前のように離脱できるようになったという。
原典より
あるときは家並のはるか上空を猛烈なスピードで通りぬけます。—— 臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション)
『臨死体験(立花隆)』は、立花隆が著したノンフィクションである。一九九一年三月放送のNHKスペシャルのための取材を出発点に、日本と欧米の体験者の証言、キュブラー・ロスやムーディら研究者への聞き取り、「文藝春秋」連載中に寄せられた体験談を収める。体外離脱、光の体験、文化による体験の差、感覚遮断や脳の仕組みを章ごとに論じ、末尾で現実体験説と脳内現象説を比べたうえで、著者は基本的に脳内現象説に立つと述べる。