春日神社の門内で見えなくなる天狗の弟子
どんな伝承か
桑名の外川初次郎が親様と呼んで慕った天狗の加納は、多度の一目連の眷属として働き、ひと月のうち二十日ほどは旅に出ていて、多度に戻るのは十日足らずだったという。こちらから会いたいと願っても会えず、夜になるといつの間にか枕元に立っていることが多かったが、初次郎の振る舞いは家の者も見ていた。親様の姿はほかの人には見えず、初次郎がお供をして桑名の春日神社に詣でると、門の外では見えていた初次郎の姿が、一歩境内に入ると見えなくなると誰もが言った。姿のない親様と初次郎が話す声を、そばの者が聞いたこともあったという。
原典より
それになお不思議なのは、私が親様に伴われていく場合でも、人様には見えぬことがあるそうで、春日神社(桑名町鎮座県社)などへお供をして参拝するときなど、御門までは私の姿が見えるそうですが、…—— 現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年))
『現代の怪奇――日本列島のミステリー地帯』は、鈴江淳也が前著『日本の奇談』に続けてまとめた、現代の超常現象と奇談のレポートである。桑名の「天狗の初さん」、新幹線の亡霊、京都のタクシーに乗る幽霊客、人魂、原因の知れない奇病、念写と三田光一の透視などを、著者の取材・面談と、大正の新聞から昭和四十年代の週刊誌までの記事で集めて収める。五つの部に分け、あとがきは昭和四十五年三月の日付で、巻末に機関誌などを入手できる団体・研究家の一覧を付す。