死んだ妻と共寝した京の侍
どんな伝承か
『今昔物語集』巻二十七第二十四話「人妻、死後に旧夫に会う語」。京の若い侍が妻を置いて地方の国へ下り、年月を経て都へ戻ると、妻は恨むようでもうれしげに迎えた。男は国で思い続けたことを語り、明日には荷も従者も呼び寄せると告げ、二人は長い夜を語り明かして、いつになく身に染みるほど愛しく思いながら抱き合って眠った。九月十日ごろの月の明るい冷えた夜だった。日が差し込んで目を覚ますと、抱いていたのは干からびて骨と皮ばかりになった死人で、男は衣を抱えて飛び出した。
原典より
この物語は、九月の十日のころのことで、その夜は、月も非常に明るくて、夜は冷え冷えとしていたという。—— 日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路)
『日本の幽霊たち――怨念の系譜』は、阿部正路が書きおろした日本文学の幽霊論で、刊行は日貿出版社が手がけた。『竹取物語』『源氏物語』『平家物語』などの物語、『日本霊異記』から『遠野物語』『聴耳草紙』に至る説話、能と歌舞伎、さらに三遊亭円朝・泉鏡花・森鴎外・小泉八雲らの近代の作品に現れる幽霊をたどり、怨念の系譜として読み解く。第一章で幽霊の時・季節・姿・場・目的を論じ、終章で稲生屋敷の物怪や百鬼夜行など幽霊の周辺に及ぶ。