坊主頭の老婆が笑う六兵衛家の座敷
どんな伝承か
明治三十年頃の旧暦三月十六日の夜、土淵村の大洞犬松が用事で栗橋村砂子畑の清水の六兵衛という裕福な家に泊まった。ほかの客は常居に寝たが、犬松だけは表座敷と奥座敷の間に寝かされた。夜半、奥座敷の床の間で足音がして顔を上げると、坊主頭で丸顔の小さな老婆が這い出してきて、低い声でけたけたと笑っては隅の暗がりへ戻る。何度も繰り返されてたまらず明け方に常居へ逃げると、家の人は、この座敷には昔からザシキワラシがいると笑ったという。
原典より
一人の坊主頭の丸顔の、小な老婆が這出して、自分の寝てるる方へやつて来る。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。