井戸の横穴から逃れた継子の出世
どんな伝承か
ある家で母が亡くなり、後妻に男の子が生まれると、継母は先妻の子を邪魔に思って折檻を重ねた。子は母の遺言を守って逆らわず孝行を尽くした。継母は春先の寒い日に井戸浚いを命じて子を底へ下ろした。たくらみを見抜いた隣の爺は子に銭百文を渡し、一文ずつ釣瓶に入れて上げさせた。継母が銭に気を取られる間に、爺は横から穴を掘って子を逃がし、継母は井戸を石と土で埋めて子が死んだと泣き歩いた。子は爺の勧めで都へ上り、奉公しながら学問を積んで侍に出世した。故郷へ戻って老いた爺に大金を贈り、貧しくなった父と弟と継母にも百両ずつ与えて許し、孝行の名を挙げたという。
原典より
其中に隣家の爺様は横脇から穴を掘って行って、さあさあお前はさうして居りゃ今に殺されるから早く此穴から逃げろと言つて、…—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。