弘法さまを背負ったそばと断ったむぎ
どんな伝承か
弘法さまが川を渡るとき、むぎに背負っていってくれと頼んだが、むぎは「おれはそんなものはいやでござる」と断った。それを見たそばが「気の毒な、それならおれが背負ってやる」と言って背負い、川を渡った。そばは寒いときのことだったので足が凍って赤くなったが、そのかわり暖かいときに生えるように授けられたという。断ったむぎのほうは、寒い冬のうちを冷たい思いをして過ごさなければならなくなったという。そばの茎が赤いことと、そばとむぎの作季の違いを語る由来譚である。
原典より
それをみてそばは「気の毒な、なら、おれがしょいこんでやる」って、しょいこせえた(背負って川を渡った)。—— 坂部民俗誌稿(長野県下伊那郡天竜村)――昔話・伝説 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
坂部民俗誌稿(長野県下伊那郡天竜村)――昔話・伝説
『坂部民俗誌稿(長野県下伊那郡天竜村)――昔話・伝説』は、天竜村坂部の民俗をまとめた民俗誌稿のうち、第十二章「口頭伝承」の一部を収めたものである。さるかに合戦、へび女房、桃太郎、花咲かじじいなどの昔話を語り手の名を添えて土地の語り口のまま記し、先途の七人塚、お万さま、天龍川のかわらんべ、早太郎のひひざる退治など落人や土地にまつわる伝説を並べる。昔話を動物昔話・本格昔話・笑話に分け、伝説、なぞと続ける。