旅僧の茶で生まれ泡と消えた子の地蔵
どんな伝承か
近江の蒲生郡西生来村の泡子地蔵は石の地蔵で、土地にはこんな話が伝わる。昔、村井藤竹という者の妹が街道で茶店を出していた。ある日訪れた旅の僧に心を寄せ、僧の飲み残した茶を飲むと、たちまち身ごもって男の子を産んだ。三年後、女が子を抱いて川で大根を洗っていると、あの僧がまた通りかかり、この子の泣き声は経文だと不思議がった。わけを聞いた僧がその子に息を吹きかけると、子は泡となって消えた。僧は、西のあれ井という池に尊い地蔵があるから子の菩提のためにまつれと言い、池の水を替えると果たして石の地蔵があらわれたという。
原典より
土俗相伝、往古此地に村井藤竹といふものあり、妹一人有、往還に茶店を出し旅人を憩息せらしむ、或日一個の旅僧来る、妹深く恋慕の情を動かし、旅僧の呑みあませし茶を呑みしに忽ち孕みて男子を産す…—— 迷信の研究(富士川游(監修)・富士川游・医学史/迷信研究・1932年(昭和7年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
迷信の研究(富士川游(監修)・富士川游・医学史/迷信研究・1932年(昭和7年))
『迷信の研究』は、富士川游が東京の中山文化研究所で監修し、昭和七年二月の緒言を付して世に出した迷信の解説書である。迷信を思考の錯誤ととらえ、その発生の由来を説いたうえで、身体・精神・疾病・妊娠と出産・育児・禁厭・相法・卜占・天文と暦・犯罪・宗教の欄ごとに迷信の事例を挙げ、科学的な説明を加える。同研究所の展覧会に使った説明のポスターをもとに簡潔にまとめ、巻末の奥書に参照した独逸と日本の文献を掲げる。