金蔵の小判を盗んだ狐
どんな伝承か
明治維新の廃藩置県の少し前、鳥取藩の金蔵で千両ほどの不足が見つかり、近ごろ急に買い物の増えた蔵番の一人が寺社奉行に呼び出された。蔵番は、毎晩残飯を与えていた大きな犬のようなものが縁側に小判三十両を置いていったので、それを使ったのだと正直に申し立てた。藩が鳥取在の国安村にある蔵谷八幡社の社司に狐を呼び出させると、社司の下女に狐が憑き、金蔵の金を盗んだのは自分で、蔵番には三十両だけ渡し、残りは御殿の庭の池の縁の黒い石の下に埋めたと告げた。その通りに金が見つかって蔵番は放免され、狐は因幡から追い払われた。のちに狐は美作の滝のそばで飢えていると下女の口を借りて許しを請い、藩は赦免した。
原典より
自分方は、食物の残りを流し尻に棄て、其頃毎日のやうに晩方に来る褐色の大きい犬に喰はすのであつたが、或夜、縁側に小判が三十雨、何者がしたともわから 置いてあつた。—— 動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。