呼べば近づく若松の田圃の狐火
どんな伝承か
福島県若松市のH氏の話である。少年時代、自家の裏手の田圃の中に、夏の夜になると毎度狐火が現れた。二、三十ばかりの火が同時に二か所、ときには三か所も一列に出て、動かないこともあれば、動いて明滅することもあった。現れない晩に家族が縁側で涼みながら「今夜あたりは出てもよかろうに」などと言うと、にわかに出現し、家の近くまで寄ってきて、さまざまな行進のさまを演じて見せたという。著者は、この種の火を電気性の自然現象と片づける説を学者の机上論だと退けている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。