滝口の武士を鳥辺野へ化かした狐
どんな伝承か
『今昔物語』の話。京都の仁和寺の東、高陽川という所に狐がいて、夕暮れに馬で通る人があると、きまって子供に化けて馬の尻に乗せてくれとせがんだ。乗せてやると四、五町ほど行ったところで馬から落ち、狐の姿に戻って鳴きながら消えてしまう。ある日、剛気な滝口の武士がその道を通ると、今度は少女が現れたので、尻に乗せて縄で縛り、土御門殿へ連れて入って大勢の武士の前で射た。すると少女はたちまち狐の姿になり、居並ぶ武士たちも土御門殿の建物もかき消えて、武士は鳥辺野の中にいたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
暮しの中の妖怪たち(岩井宏実・岩井宏実・民俗学・1986年(昭和61年))
『暮しの中の妖怪たち』は、岩井宏實が昭和六十一年に著した妖怪の概説書である。鬼・天狗・河童から山姥、産女、雪女、怪火、ザシキワラシ、化け猫、狐狸、幽霊まで、各地の伝承や古典・絵画に見える妖怪を一つずつ取り上げ、その姿と仕業を説く。第I章で個々の妖怪を紹介し、第II章で妖怪の性格、出現の空間と時、正体を論じ、巻末に著者が資料とした妖怪の本の一覧とあとがきを置く。