桶から出た大入道の正体
どんな伝承か
『太平百物語』にある話。京都伏見の穀物問屋徳地屋へ、五十過ぎの女がやって来て桶を一つ預けて去った。ほどなくその桶が動きだし、中から小坊主が出てきたかと思うと、七尺余りの大入道になって、ああ窮屈だといって四方を睨め回した。主人は剛気な人で、脇差を取って睨み返し、何の変化か、なぜ人を悩ますのか、立ち去らねば斬り捨てるぞと迫った。入道は、自分は大坂真田山の狐で、この家の者が住処に小便をして穢すため桃山の狐に頼んで来たのだと答えた。調べると番頭の太次兵衛が青ざめて詫びたので、主人が入道に詫びを入れ、三日のあいだ赤飯と油ものを狐の穴へ供えることで収まったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
暮しの中の妖怪たち(岩井宏実・岩井宏実・民俗学・1986年(昭和61年))
『暮しの中の妖怪たち』は、岩井宏實が昭和六十一年に著した妖怪の概説書である。鬼・天狗・河童から山姥、産女、雪女、怪火、ザシキワラシ、化け猫、狐狸、幽霊まで、各地の伝承や古典・絵画に見える妖怪を一つずつ取り上げ、その姿と仕業を説く。第I章で個々の妖怪を紹介し、第II章で妖怪の性格、出現の空間と時、正体を論じ、巻末に著者が資料とした妖怪の本の一覧とあとがきを置く。