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舞の最中に消えた彦兵衛と舞扇

所在地東京都中央区
年代江戸期
登場彦兵衛、小網町の町人・亡魂
出典井上円了 妖怪学講義

どんな伝承か

『快談年男』の「亡魂舞踏」より。鉄砲洲から築地西本願寺のあたりは江戸の東南、海辺の景勝地であった。この辺に棟門の高い弓場の家があり、隠居した岩崎氏は七十に及んでなお堅固で、謡と仕舞を好み、寝ても夢の中で謡うほどであった。長く出入りしていた小網町の町人彦兵衛は、京都へ誂えた舞扇を携えて、ある夕べ久しぶりに訪れ、遅参を詫びた。主は喜んで酒宴を催し、ともに舞を舞ったが、その最中に彦兵衛の姿はかき消え、庭を探しても影も形もない。翌朝、彦兵衛の子藤七が扇を持って訪れ、父は昨日死に、末期に扇を届けよと遺言したと告げた。前夜に見たはずの扇はどこにも無かったという。

原典より

こはふしぎやと障子を明け縁側より庭の隅々隈々をさがせども彦兵衛の陰も形もあらばこそ、…—— 井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編) より引用
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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)

『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。

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