時化を告げる虫の音のような船霊
どんな伝承か
島根県の八束郡にあった河波村での採集によると、船霊がいさむと、ジィーンジィーンという虫の鳴き声のような音が、船に乗っている者みなの耳に聞こえるという。これは海が荒れる前触れだとされた。同じ地方の北浜では、時化の前や、風が南へ変わろうとするときなどに船霊がしげると言い、船のあちこちからその音がするという。船から聞こえる音を天候の知らせとみる漁民の伝えの一つである。
原典より
また島根県八東郡河波村(現・島根村)の採集では、船霊がいさむと、ジィーンジィーンと虫の鳴く声のように一同に聞こえる。—— 日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。