蓑笠の濡れない大男に化けた狐
どんな伝承か
信州諏訪の湖東村に住む幸吉という人の母親がまだ若いころ、小雨の降る日にマガリ坂の狐林へ栗拾いに出かけた。林の奥へ入って行くと、向こうから見上げるような大男が歩いて来た。落ちた栗を拾おうと手を出すと、大男もまねをして手を出し、横取りをする。男のくせに妙なことをすると思ってよく見ると、新しい蓑笠が少しも濡れていない。畜生め、よくも人をだますと口に出して叱ると、とたんにがさっと音がして、人ほどもある大きな狐が飛び出して行ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。