廊下で娘が行き会った男のわらし
どんな伝承か
岩手の遠野郷、土淵村飯豊の今淵勘十郎という人の家では、町の女学校へ通う娘が帰省していたが、この娘がある日、廊下で座敷わらしと行き会った。この座敷わらしは男の子どもであったという。同じ村の山口の佐々木家では、あるとき主人が上京して留守にした。細君が一人で縫い物をしていると、次の間の主人の部屋で紙をもむような音がする。誰もいないはずと板戸を開けたが何の影もなく、もとの場所へ戻って仕事を始めると、しきりに鼻を鳴らす音がした。座敷わらしのいたずらと悟って放っておくと、やがて音は聞こえなくなった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。