田植えを手伝ったおくないさま
どんな伝承か
遠野郷土淵村柏崎の阿部家では、昔、田植えだというのに人手が足りずに困ったことがあった。主人が愚痴をこぼすと、どこから来たのか背の低い子どもが近づいて、おらが手つだい申すべと言い、すぐ田の中へ入った。昼飯時になっても飯を食わずによく働き、日の暮れ頃には植え上げることができた。晩には家へ来いと言って先に帰したが、いくら待っても子どもは訪ねて来ない。気がつくと縁側から座敷にかけて小さな泥の足あとが点々と続き、たどってゆくと神棚のおくないさまのところで消えていた。扉を開けると、その腰から下が泥まみれになっていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。