紅い振袖で家を出た座敷わらし
どんな伝承か
遠野郷の附馬牛村のある家に、旅の六部が来て一夜の宿を求めた。家の者はその六部の所持金を奪い、それからめきめき身代がよくなって分限者となった。ところが近ごろ、十ぐらいの女の子が紅い振袖を着、紅い扇子を持って踊りながらこの家から出て行き、下窪という家へ入ってゆくのを見た者があった。その座敷わらしの幻影を見たという噂が立ってから、両家の貧富は裏と表に入れ替わったという。下窪の家では、近所の娘などが訪ねた折に、神棚の下に女の子の座敷わらしがうずくまっているのを見ることがあった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。