朱の袴をはいた裸身の山の女神
どんな伝承か
春に山を下りて田の神となり、秋の収穫が済むとまた山へ帰る——農民が語る山の神には、そうした行き来がある。だが山で木を伐り炭を焼いて暮らす人々が信じる山の神は、田の神とは結びつかない。同じ山の神でも、椀や盆をつくる木地屋は夫婦の神とし、狩人は土地によって男の神とも女の神とも言う。秋田の大曲あたりでは、朱の袴だけをまとった裸身の女神として思い描かれてきた。奥利根の片品村戸倉のあたりでは十二さまと呼び、十二人の子をもつ女神だとしている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。