山の神の産と二組のマタギ
どんな伝承か
山の女神のお産に出会った狩人の民話が、山かせぎの人々に長く信じられてきた。秋田のマタギはこれをコダマのレッチュウとスギのレッチュウと呼ぶ。昔、北秋田の狩山で七人組と六人組が小屋がけをしていた夜更け、若い女が来て産をするから泊めてくれと頼んだ。七人組のコダマのレッチュウは産穢を忌んで断り、組頭は鉄砲の筒先を向けて追い返した。六人組のスギのレッチュウは招き入れて介抱し、女は山の神と名のって三頭の熊のありかを教え、七人組には神罰を与えると言い残した。翌朝、七人組の小屋には道具だけが残り、梁の上を見なれぬ毛色の小鼠が七匹走り回っていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。