新八狸の一族を撃った北島藤蔵
どんな伝承か
昔、庚申谷の近くで新八狸の眷属が蜂須賀藩の火術指南北島藤蔵に殺されてから、その一族が暴れだした。深夜、庚申谷の竹林の奥から糸車の音がするので弟子がたどると、小屋で手ぬぐいをかぶった老婆が里唄を歌いながら糸車を回していた。藤蔵が糸車の心棒を狙わせて撃つと、胸を射抜かれた古狸が倒れていた。谷が昼のように怪しく光り、鏡台に向かう美女がいたときは行灯を撃って正体の狸を仕留めた。夕立の日には美女と相合傘で帰ったが、女は消え、傘と思っていたのは卒塔婆だった。怒った藤蔵は新八を追い回し、弾を拾って食べてみせるほどの古狸もついに撃ち取ったが、狸の正体を現したのは三日目ごろだったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。