蟇目の矢で落とす修験の狐落とし
どんな伝承か
戸川安章は修験による狐落としを実見して、かなり詳しい報告を寄せている。まず狐憑きを座敷の真中に坐らせ、行者は巻物と鏡を両手にして向かい合い、座敷の四方にシメを張りめぐらし、四隅に灯明をともす。三人の弟子が法華経七の巻・金光明経・仁王経を携えて取り巻き、法螺貝を合図に一同で数珠をすり、般若心経から三宝荒神の真言、九条錫杖の文、観音経や仁王経、不動経までを読み上げる。それでも四時ほどかけて落ちなかったので、次に皮つきの桑で作った弓矢による蟇目に移り、般若心経を終わりから逆に読んでは四方から矢を射かけ、千遍を待たずに落ちたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの――俗信は今も生きている(石塚尊俊・1959年(昭和34年))
『日本の憑きもの――俗信は今も生きている』は、石塚尊俊が昭和三十四年に著した研究書である。狐・犬神・蛇などの動物霊が人に憑くという俗信と、それを操るとされる家筋について、全国の伝承と近世以来の文書を集めて論じる。出雲・隠岐・豊後・土佐では筋の家の割合や縁組の偏りを調べ、憑きもの落としの行法や家の神とのつながりまでを七章で追っている。