命乞いした老狐と泰通の屋敷
どんな伝承か
『古今著聞集』に見える話である。大納言泰通の五条坊門高倉の屋敷には狐が多く住み、いつも化けていたので、腹を立てた大納言は狐狩りをして根絶やしにしようと思い立ち、侍たちに支度を言いつけた。するとその前夜、夢に白髪の年老いた大童子が現れ、しきりに命乞いをした。翌朝、端の遣戸を開けてみると、毛の抜けた老狐が一匹こちらを見上げていて、やがてゆっくり簀子の下へ入っていった。不思議に思った大納言がその日の狐狩りを取りやめると、以後狐は化けなくなり、家に吉事があるときは必ず鳴いて知らせるようになったという。
原典より
翌朝、大納言が端の遣戸を明けて見られると、老狐の毛なきが一匹、大納言の方を見上げており、やおら簀子の下に入って行ったので、…—— 日本の憑きもの――俗信は今も生きている(石塚尊俊・1959年(昭和34年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの――俗信は今も生きている(石塚尊俊・1959年(昭和34年))
『日本の憑きもの――俗信は今も生きている』は、石塚尊俊が昭和三十四年に著した研究書である。狐・犬神・蛇などの動物霊が人に憑くという俗信と、それを操るとされる家筋について、全国の伝承と近世以来の文書を集めて論じる。出雲・隠岐・豊後・土佐では筋の家の割合や縁組の偏りを調べ、憑きもの落としの行法や家の神とのつながりまでを七章で追っている。