下り松で馬を取り殺した怪しい女
どんな伝承か
天文五年の夏五月二十四日、将軍足利義晴は愛宕山への代参として畠山修理太夫義忠を遣わした。代参を無事に済ませて帰る途中、下り松のあたりに差しかかったところ、どこからともなく怪しい女が現れ、義忠の乗る馬の口を取って笑った。そのとたん馬はもだえ苦しんで倒れ、死んでしまったという。著者はこの記録を引き、ギバを馬の鼻から入って尻へ抜ける虫とみる説よりも、馬に乗って現れる魔女とみる見方を取りたいと述べている。
原典より
忽然と一人の怪しい女が現はれて、島山の乗馬の口を執つて笑ふと齊しく、馬は忽ちに悶絶して斃れた。—— 民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異)
『民俗怪異篇』は、磯清が著した民間の怪異をめぐる随筆集である。馬を襲う魔物ギバとその禁厭、阿波の首切れ馬「夜行さん」、姫路城の刑部姫や猪苗代城の亀姫などの城の怪、化け猫、灯火による占い、秩父三峰の狼の信仰と狼の怪、怪談を題材とする落語を取りあげ、各地の言い伝えや古い記録を引きながら語る。序に続いて「馬の災と馬の怪」「城の主」「猫」「灯の占」「狼の噂」「落語に存在する怪談」の六篇を置き、それぞれを小見出しの短い話に分ける。