粟井坂まで山を渡る怨霊火
どんな伝承か
伊予松山の七不思議の一つに、粟井坂の怨霊火がある。毎年九月になると、石手川の南から一筋の火が舞い上がる。その数は三つ五つのときもあれば、十、二十のときもある。火はふわりふわりとゆっくり、五、六里の道のりを山伝いに進み、粟井坂まで来ると名残惜しそうにふっと消える。三晩も四晩も続けて出ることもあれば、七日に一度しか出ないこともある。昔、高縄の城主の河野某が家来に謀られて殺され、その怨霊が火になったものと伝えられている。
原典より
それがふわりふわりと徐かに、五六里の間を山傳ひに粟井阪まで来ると忽然消になる。—— 民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異)
『民俗怪異篇』は、磯清が著した民間の怪異をめぐる随筆集である。馬を襲う魔物ギバとその禁厭、阿波の首切れ馬「夜行さん」、姫路城の刑部姫や猪苗代城の亀姫などの城の怪、化け猫、灯火による占い、秩父三峰の狼の信仰と狼の怪、怪談を題材とする落語を取りあげ、各地の言い伝えや古い記録を引きながら語る。序に続いて「馬の災と馬の怪」「城の主」「猫」「灯の占」「狼の噂」「落語に存在する怪談」の六篇を置き、それぞれを小見出しの短い話に分ける。