不動坂の狐に道を迷わされた女
どんな伝承か
昭和になってからのこと、三十を過ぎた一人の女が、日暮れ近くに東の我が家へ向かって急いでいた。不動坂にさしかかってからいくら歩いても、我が家の見えるところに出ない。とうに着いているはずの頃合いなのにと寒気を覚え、怖くなって道ばたの家を訪ねると、村をはるかに越えた遠い所まで来てしまっていると知らされ、女はその場に泣き崩れた。その家の親子が気の毒がって家まで送り届けてくれ、それまで本気にしていなかった女の家の人たちも、不動坂の狐の恐ろしさを改めて思い知ったという。
原典より
そして自分が村をはるかに越えて遠い所に来ていることを知って泣き崩れてしまいました。—— 胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説(胆沢町(編)・胆沢町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説(胆沢町(編)・胆沢町史)
『胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説』は、胆沢町の町史民俗編の一冊のうち、第四章「口承・伝説」を収めたものである。第一節は松浦佐用姫と高山掃部長者の伝説を扱い、胆沢・水沢周辺の伝説地を列挙したうえで、町内に伝わる佐夜姫の本地物の写本や『南部叢書』所載の「奥州胆沢高山実伝」を翻刻する。第二節「いさわの昔話」は大蛇・狐・むじな・飢饉・戦後の怪異などの話を番号順に並べ、第三節「いろいろな昔話」へと続く。