投身の谷に響く地獄鳥
どんな伝承か
秋田街道を女連れで越えようとする男がいた。宿の者は危険だと戒めたが男は聞かず、翌朝二人は子を連れて発った。不審に思った宿の者が後を追うと、男女は分かれ道を残雪の多い右へ折れ、胆沢川の断崖の上に出た。女は背負った子を雪の上に下ろすと谷へ突き落とし、男女も手を取り合って身を投げた。数日後、武士三人が二人を尋ねて来た。男は殿の小姓、女は殿の愛妾で、道ならぬ恋が露見して逃げた末の投身であった。以後その谷間には子の泣き声に似た声が聞こえ、人はそこを地獄鳥と呼んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説(胆沢町(編)・胆沢町史)
『胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説』は、胆沢町の町史民俗編の一冊のうち、第四章「口承・伝説」を収めたものである。第一節は松浦佐用姫と高山掃部長者の伝説を扱い、胆沢・水沢周辺の伝説地を列挙したうえで、町内に伝わる佐夜姫の本地物の写本や『南部叢書』所載の「奥州胆沢高山実伝」を翻刻する。第二節「いさわの昔話」は大蛇・狐・むじな・飢饉・戦後の怪異などの話を番号順に並べ、第三節「いろいろな昔話」へと続く。