人狐に借金を払ったと言い張る夜襲
どんな伝承か
正月二十四日の夜、人も寝静まった頃、源四郎宅に浅四郎と友四郎が突然訪れ、大声でわめいた。「お前から借りた金子三百匁は、昨晩お前の家の人狐が取りに来たから、狐に耳をそろえて支払ってやった」というのである。驚いた源四郎が夜分の来訪をなじると、友四郎が隠し持った七尺棒を振り上げて頭上に打ってかかった。外では作蔵らが見張り、源四郎は半死半生にされた。源四郎は年寄の久太夫に訴え出て、作蔵の証言もあり、庄屋によって正式に取り調べられることになった。
原典より
お前から借りた金子三百匁は、昨晩お前の家の人狐がとりに来たから、耳をそろえて狐に支払つてやつた—— 憑きもの持ち迷信――その歴史的考察(改訂版)(速水保孝・1953年(昭和28年)初版・1956年(昭和31年)新版) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
憑きもの持ち迷信――その歴史的考察(改訂版)(速水保孝・1953年(昭和28年)初版・1956年(昭和31年)新版)
『憑きもの持ち迷信――その歴史的考察(改訂版)』は、速水保孝が昭和二十八年に著し、昭和三十一年に書き加えて新版とした研究書である。出雲・隠岐を中心とする山陰の狐持ちなど、家筋に結びつけられた憑きもの迷信を、法務局が扱った人権事件、藩の触書や村の古文書、加茂町の世帯調査から集めている。狐持ちの家に生まれた著者の体験から説き起こし、江戸中期以降の新興地主への反感に起こりを求める。柳田国男が序を寄せている。