椿の油を待って死んだおたま
どんな伝承か
田沢の村に薬売りが来て、行李に薬をいっぱい入れて家々を回っていた。泊まる所がなく、おたまという家に宿を取ったが、その家の娘おたまは病気で働けない体であった。薬売りは嫁をもらわぬ人で、幾度も回っては親切にされ、娘に上等な椿の油を持って来ようと約束した。おたまはその日を待ったが、約束の日は海が時化て船泊まりとなり、着けなかった。娘は恋い焦がれたまま亡くなってしまう。話を聞いた男は、それほど待ってくれたのならと椿の油と種を積んで再び東田沢へ向かったが、東田沢の浜で船がひっくり返って遭難した。船が返った跡には自然に草が生えて船の形が残り、そこが椿山の神様だと伝えられる。
原典より
「椿明神男だべが」って、おれたち聞く聞くしたわけ。—— 日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第1巻』は、叢書『日本伝説大系』のうち北海道と青森県の伝説を収めた巻である。人間の始めやコロポックル、アイヌの神謡、岩木山一代記、おしら祭文、義経や弘法大師の事跡、狐や大蛇の話、地名や神社の由来などを、口承の資料を中心に採る。伝承地を記した例話を冒頭に置き、〔類話〕〔文献〕〔参考〕の欄で各地の類話の梗概と近世以後の文献の原文を添える編み方をとる。