物言えば射られた雉と雉子畷
どんな伝承か
垂水村に雉子畷がある。伝えるところでは、昔この地の長者に岩氏という者がいて、西成郡の長柄橋を架けるにあたり人柱がなくては成就しないというので、継ぎ当てた袴を着ている者を捕らえて沈めようと定めた。ところが岩氏自身の袴がそれに当たり、誓約どおり水底に入って橋は成就した。岩氏には世に勝れた美しい娘が一人あり光照前と称されたが、育っても物を言わず啞のようであった。河内国交野郡禁野の何某が恋い慕って迎えたものの、なお言葉を発しないので送り返される。その途中この畷で夫が雉の鳴き声を頼りに射たとき、娘は物言えば長柄の橋柱、鳴かずば雉子も射られざらまし、と歌った。人々はここを雉子畷と呼んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。