篁の妻が銭を掛けた豊久野の松
どんな伝承か
『銭懸山豊久寺略縁起』によれば、承和年間、小野篁が詔を辞して隠岐へ流された。その妻は別れを惜しんで館を忍び出て叡山のあたりに住み、そこも夜半に抜け出して、盲人を一人連れ伊勢の大神宮を志した。旅に疲れ果ててこの野に着き、草刈りの男に道のりを尋ねると、男は戯れて、十日通る豊久野、七日通る長縄手、三日通る三渡り、まだ二十日の道のりだと答えた。力を落とした女は、野中の一本の松を大神宮と拝もうと、盲人の肩に掛けた銅銭を松の枝に掛けて伏し拝んだ。草刈りの男たちがその銭を取ろうとすると、たちまち両頭の蛇となって炎を吹き、誰も近寄れなかった。事情を聞いた男は神徳に肝を冷やし、女と盲人を斎宮まで送ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第9巻』所収の「文化叙事伝説」および「自然説明伝説」全100話(奈良・大阪・和歌山・三重=近畿南部/紀伊)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。