松に掛けられた箱と熊野権現
どんな伝承か
建久元年三月三日、一人の山伏が平野の祇園社に参り、役小角の手形になる熊野権現を牛頭天王と並べて祀るようにと勧めたが、神主は承知しなかった。山伏は背負っていた箱を、本社から未申の方角へ五町ばかりの松の木に掛けて立ち去った。その夜、松から霊光が放たれ、社内には一夜のうちに三株のなぎが生え、三羽の鳥がとまって離れなかった。人々が怪しんで箱を開けると熊野権現が現れたので、社殿を建てて毎年三月三日に神主が拝することとし、山伏は役小角の化身として行者堂に祀り、なぎを神木としたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。