血に染まった角倉の滝と二頭の鹿
どんな伝承か
朱雀天皇の御代、比叡山に二頭の鹿が住みついて人畜を害し、都まで侵そうとした。朝廷は北面の武士梅津中将清景に勅命を下し、清景は兵を率いて山へ入る。鹿は逃げ、中将は山陰から山陽へと追って玖珂の里に至った。矢を繰った所を繰り矢谷、見失ってふたたび出会った所を相の谷、射伏せた所を伊房と呼ぶという。鎌肩骨を射抜かれた鹿が倒れると山河は雷のように鳴り響き、流れた血で角倉の滝は紅に染まったと伝える。中将も力尽きてこの地で果てたので、桃ヶ峠に梅の木を植えて偉勲をしのんだ。のち鹿の霊が祟るので、承平五年、川中の小島に社を建てて祀ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。