玉坂の大入道を撃った助左衛門
どんな伝承か
天保十四年十一月のある日、南設楽郡作手村大和田に住む郷士の阿部助左衛門は、古戸の友人と狩りに出た帰り、御獄山で日が暮れた。霧雨も降り出したが、泊まっていけという友人の勧めを断り、玉坂のあたりまで来た。すると近づく僧形の人影が、目の前で見上げるほどの大入道に変わった。豪胆な助左衛門はひるまず鉄砲を撃ち放ち、大入道は消えて雨音だけが残った。人々は鬼もかなわぬと褒めそやした。その後もこの玉坂には雨の夜などに入道坊主が現れた。はじめは三尺ほどの小坊主で、一間ほどに近づくと一丈もの大坊主になる。先に見越したぞと言えば消えるが、先に入道から見ていたぞと言われた者は死ぬといわれ、狸の仕業と信じられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。