行明の星野が拾った天女の羽衣
どんな伝承か
牛久保町の行明は昔、星野の里と呼ばれ、豊川沿いは千本柳原といった。この里の星野某(一説に行明という漁師)が釣竿を肩に柳原を歩いていると、松の木に美しい衣が掛かり、えもいわれぬ香りを放っていた。持ち帰って石の唐戸にしまうと、その夜美しい女が訪ねてきて住みつき、二人は夫婦になって男の子が生まれた。子が三つになった誕生祝いの十五夜、妻にせがまれて衣を床の間に掛けると、妻はそれを身にまとって宙に浮き、音楽とともに天へ昇っていく。自分は羽衣を取られた天女で縁はこれまでだと告げ、残す子のために片葉の茶を授けると言い残して月光の中に消えた。やがて庭に片葉の茶が茂り、煎じて飲ませた子は病を知らず育ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。