牛沼で狐と化かし合った釣り人
どんな伝承か
露藤の西方、天王川のほとりに牛沼という地名がある。大水で牛が流されたことに因む名だという。今から百二十年ばかり前、部落の某がこの牛沼へ魚釣りに行った。初秋の夕方、面白いように釣れるので帰りそびれていると眠気が差す。向こう岸を見ると狐がいて、手を上げるたびに眠くなるようであった。ならばと某が手を上げると狐が眠り始め、はずみで沼へ落ちて叢に隠れた。笑って道具をまとめ家路についたが、萱野にさしかかると道がわからない。突然大川が現れ、脛をまくって渡ると山の麓に立っており、着物を破って山を越えても道に出られない。腰を下ろして休むうち鶏の声で夜が明けると、山も川もなく、野原を歩き回った跡だけが残っていた。
原典より
露藤の西方、天王川のほとりに牛沼という地名があります。—— 高畠町伝説集(昭和三十二年(1957)刊/高島高校文芸班編) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
高畠町伝説集(昭和三十二年(1957)刊/高島高校文芸班編)
山形県東置賜郡高畠町(屋代・亀岡・和田・二井宿・糠野目・高安・露藤ほか各地区。一部は隣接の米沢市・南陽市宮内・長井市)に伝わる伝説を、神仏/人物/怪異/動物/什物/地物/地名/地誌 の八篇に分類して集成する。屋代神社の鬼女縁起、犬の宮・猫の宮、安久津八幡、狐狸むじなの化かし、天狗・怪物・沼の怪、青葉の笛や応挙の幽霊画、伊達・上杉の城館跡や古戦場、地名由来など、高畠の地に根ざした怪異・霊験・由来譚を地区つきで網羅する。